田谷が10年ぶりに売上高前月比増
田谷、売上高10年ぶり前年超え バースデー優待が奏功
「TAYA」などの美容室を全国に143店展開する田谷は、既存店の売上高が前年より2・9%増えた。
出典:朝日新聞
10年ぶりに増加?と思い、田谷さんの投資家向けページを見て経営/財務状況を見てみました。
田谷さんは美容室業界で上場している数少ない企業の一つです。
田谷さんの他には「アルテサロン(Ash)」、「ヤマノ」、「MHグループ」「シーボン」さんなどが上場していますね。
TAYAでは1980年代からPC活用していたりと、顧客データの活用をいち早く取り入れたのも田谷さんだと言われていたりしますね。
では早速、売上の推移などベーシックな数字を見ていきましょう。
田谷の直近5年の売上/営業利益の動向(2010年~2015年)
売上高は2010年の126億から2016年は117億とマイナス7%ほど減少。
年々減少傾向で歯止めが効いてない状況となっております。
ただ、冒頭のニュースでもあったとおり2016年は売上を上回ってますので、
来期さらに改善する可能性もありますね。
次に営業利益を見てみると、
売上から営業にかかるコストを引いた営業利益は赤字続きで歯止めが止まらない状況になっています。
2016年に関しても2億円ほどの赤字を出しています。
恐らく田谷の損益分岐点(儲けが出る売上基準)が「120億程」付近で、ここを割ってしまうと赤字になるというコスト構造のようです。
※1店舗あたりで見ると1店舗あたり8000万程度が損益分岐点っぽいですね
田谷のコスト分析
では、どんなコストが発生しているのか?
そういうのも決算説明資料や、有価証券報告書を見れば書いているのでかなり面白いです。
2013年 | 2015年 | 増減比 | |
---|---|---|---|
売上高 | |||
美容施術 | 10,736 | 10,382 | 97% |
商品 | 1,262 | 1,338 | 106% |
その他 | 48 | 42 | 88% |
売上合計 | 12,046 | 11,762 | 98% |
売上原価 | |||
美容施術 | 9,863 | 10,043 | 102% |
└材料費 | 478 | 488 | 102% |
└労務費 | 5,443 | 5,556 | 102% |
経費 | 3,941 | 3,999 | 101% |
商品 | 602 | 612 | 102% |
その他 | 28 | 22 | 79% |
原価合計 | 10,493 | 10,677 | 102% |
粗利益 | 1,553 | 1,085 | 70% |
一般管理費 | 1,475 | 1,505 | 102% |
営業利益 | 78 | -420 | -538% |
ほんのり見にくい図になってしまったんですが、費用内訳を見てみると、労務費(人件費)が大きいですね。
店販は好調なようで、2013年より7億円程度売り上げがあがっています。
ヘアビューロンが1時間に一階売れているという触れ込みを見かけたことがあるので、もしかするとビューロン効果かもしれないですね。
労務費が増えていますが、コストが増えすぎているということはなさそうです。
従業員数と平均年収+幹部の報酬額
次に従業員数や年収を見ていきたいと思います。
IRをみれば他の店舗の従業員の年収が「丸裸」なんです。
ちなみに田谷の従業員数と店舗数は下記になります。
1店舗あたり10名程度ですね。2013年から従業員が増えているのが気になります。
ちなみに田谷の平均年収は300万円程度。
売上が減少しているにも関わらず、従業員を増やしているのが赤字拡大の一つの要因でもあります。
しかし平均年収が300万というのは、もっと低い方もいるということなので厳しい世界ですね・・。
経営かなりヤバイのでは?
現預金はまだあるので、「売上を上げる」「コストをさげる」の対応をすれば改善はします。
社長も変わったので経営革新に入るのではないでしょうか。
しかし、広告費を上げても売上が伸びていないところを見ると、決算から読み取るに田谷さんは経営状況が非常に厳しい状況だと思われます。
なぜこんな状況なのか?
もはや「ビジネスモデルの崩壊」が起こっている可能性があります。
田谷の客数と稼働可能席数を見てみましょう。
1日あたり平均2.2名~2.7名が1席を使用するようです。客単価は大体6000円程度
しかしこれ、適正なんでしょうか?稼働可能枠で見てみると下記になります。
座席が本来稼働できるはずの枠が7~8時間程度存在しています。
これ寝かしている在庫ということになるんですよね。
土日の可動枠などを見越して店舗を大きく作るサロンが作りますが、平日の余剰枠はただの「コスト」です。
店舗を大きく持つだけ維持のための固定費もかかる、人件費もかかる。
また店舗が大きいがゆえに価格競争にも持ち込みづらい。
これを見ると店舗サイズは縮小しても良いように思えますが、土日を考えると難しいのでしょうね。。
田谷だけの問題ではなく、これが美容業界の未来かもしれない
この記事の内容は、「田谷やべーなww」とか笑っている場合ではなく、美容業界全体の課題だと考えて頂いた方が良いです。
一般的に「正社員」の美容室もまだまだ多いですが、現在は「業務委託」形式で個人事業主として働かせているサロンが市場としてかなり比率が高くなっています。
何故「業務委託」が流行っているかというと固定費を持つリスクがなくなるからです。
美容室側からすれば「売上計上時に歩合で渡すだけ」なので、固定費のリスクが少ないのです。
美容室のコスト構造は4~5割は人件費がしめると言われています。
今後より業務委託サロンは増えていくでしょう。
もはや正社員で雇う、大型店を構えるというビジネスモデルが崩壊しつつあるのかもしれません。
ちなみにアルテサロンさんも「直営店」は厳しいようです。次回のレポートでご紹介致します。
大手チェーンや高級店で勤めている方は危機感を持ってもいいかもしれないですね。
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