【調査】美容師に残業代はあるのか

[記事内外にPRを含みます]

夜遅くにヘアサロンの前を通ると明かりがついており、カット練習などをしている光景はガラス張りのサロンでよく見かけることと思います。
美容師として業界に入ると、それが当たり前で習慣化し、営業後残って練習するのは当然という雰囲気になります。

でもこれは残業になるのではないだろうか?
じゃあ、残業代が発生するのではないだろうか?
そう疑問に思ったことはありませんか?

今回は美容師に残業代はあるのか調査してみました。

残業の定義とは?


(出典:https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/asset.bengo4.com/categoryImage/2302.jpg

何時からが残業なのか?
意外と残業の定義って知らないものです。

まずは労働時間について説明していきます。

所定労働時間

基本的に残業は「所定労働時間」を超えて行われる労働を指します。

所定労働時間とは労働者が、始業時刻から終業時刻まで勤務することを義務づけている基本的な労働時間のことをいい、各社で時間は違います。

法定労働時間

間違いやすい言葉に「法定労働時間」というものがあります。
法定労働時間とは労働基準法第32条で定められている労働時間の上限のことを指します。

1.使用者は、労働者に休憩時間を除き1週間について40時間を超えて労働させてはならない。
2.使用者は、1週間の各日については、労働者に休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない。
(出典:労働基準法第32条より(http://www.houko.com/00/01/S22/049.HTM)

各社同じなのは法定労働時間になります。

休憩時間も決まっています

労働時間が6時間を超える場合は少なくても45分、8時間を超える場合は1時間の休憩を与えなければなりません。

法内残業と法外残業

労働基準法では法定労働時間を上回る労働時間を設定することは禁じられているため、所定労働時間は法定労働時間と同じかこれより少ない時間となります。

そのため、企業によって所定労働時間が違うため法定労働時間内で収まる「法内残業」と、そうでない「法外残業」が発生します。
これを超えての労働には残業代が発生します。

残業代についての計算法はそれぞれ違っており、法内残業は企業の就業規則や労働契約で定められており、常識的な範囲内で任意に定めることが可能です。

法外残業は労働基準法第37条により定められており、違反すると罰則がさせられることがあります。

もし残業代が出ていないのであればそれは「サービス残業」になります。

電通残業事件

残業に関しては、就業規則や労働基準法で定められてはいますが、度々ニュースで長時間労働での過労死が問題となっています。
記憶に新しいのは大手広告代理店電通の事件ではないでしょうか?

当時24歳の新入社員、高橋まつりさんが過労自殺した事件です。
試用期間後、正社員になってからの残業時間は、労働基準監督署が把握するだけでも約105時間だったとのことです。

ちなみに過労死ラインとされる80時間を上回っており、105時間というのは異常な数字です。

他人事ではありません

希望に胸膨らませ入社したのにも関わらず、このような結果になってしまい本人はもちろんご家族のことを考えると胸が痛くなります。
高橋さんは度々SNSでも激務について、「休日出勤・朝の4時に退社・会社に20時間居た」など書き込みをしています。

美容業界はここまでひどくはないですが、正直他人事とは思えません
労働基準監督署が把握しきれていない残業があるなら、高橋さんはもしかすると「サービス残業」をしていた可能性はあります。

人が一人死んでいるのでお金の問題に焦点を当てると下品に感じますが、残業代が出ていないのはかなりの問題です。
この事件は“命”の問題でありお金の問題ではありませんが、人が一人死んでしまうなんて異常な職場環境だったのでしょう。

美容師と残業代の実態

広告業界や飲食業界はたびたび長時間労働が問題となり、ニュースで取り上げられていますが、美容業界はどうなのか。
一般的に残業をする場合は抱えている仕事が終わらない場合がほとんどです。

技術職ゆえの残業理由

美容師の残業の場合はお客様の施術が長引いて残業というよりは、練習やミーティングをしている場合がほとんどです。
本来の仕事は一旦ひと段落してから、その後自身のスキルアップやサロンのために残業するのです。

所定労働時間外または法定労働時間外の労働は残業扱いとなり残業代が支払われなければなりません
しかし、美容師の残業代の実態はどうなのかというと、正直支払われていない場合がほとんどだと思います。
つまり、美容師はサービス残業をしている人が圧倒的に多いのです。

世間の美容師の残業代の反応

ツイッター上では様々な意見があります。

https://twitter.com/pinkspider_jade/status/809762497695608832
https://twitter.com/nusPLWrgxSxnT6P/status/809044359748456448
https://twitter.com/msk19950721/status/804351919661535232
https://twitter.com/hazakimoa/status/802764167723651073

“残業代”という以前に美容業界には“残業”という概念がないと言った方が良いのかもしれません。

なぜ残業代が出ないのか?

社会問題になっている“残業”ですが、美容師はなぜ残業代が出ないのか?
以下のようなことが考えられます。

①営業時間外のため


(出典:https://zangyou.org/taisyoujikan

例えば、10時出社のサロンは19時まで勤務でそのうち1時間は休憩を取らなければなりません。
正直、休憩に1時間も取れるサロンはごく一部ですが、一応労働基準法で定められています

上記の時間を守れば労働時間は8時間で、一応法定労働時間は守ることにはなります。
基本的に美容師の労働時間はあくまで“お客様との接客中”という認識があり、営業後の“接客していない時間”は労働時間に含んでいないという考えがあるようです。

営業時間外は個人の自由時間と考えられ、後片付けの掃除やカット練習などで残業したとしてもそれはサービス残業となり残業代が出ないケースがほとんどです。

この辺は線引きが非常に難しいですが、残業扱いにするのかという判断がサロンによって違うのと、やはり美容業界では残業しているという概念がなく残業代が出ていないのが現状です。

②スキルアップしないと仕事にならないため

美容学校からサロンに入社して、晴れて美容師として働きだしてもいきなりカットができるかと言えば、正直なにもできません。

なにもできないアシスタントに、サロン側はお給料を払ってくれます
売り上げを上げられませんが、育ってくれれば大きな売り上げを作ってくれるという期待を込めた将来の投資として、きちんとお給料を支払います。

美容師はスキルアップしないと仕事になりませんが、スキルアップは将来の自分の為の自己投資という考えもあり教える先輩も無償で教えるという風習が昔から引き継がれています。

しかし、練習する時間はどうしても営業後が中心となります。
ここでも営業後の時間はあくまで自由時間という見方をされますので、どのように時間を使うのかは個人の自由です。
営業が終われば個人の“自由時間”ですので、残業代がでないサービス残業となります。

スタイリストもスキルアップのための残業

アシスタントの話をしましたが、美容師は常に技術を磨かなければいけませんので、スタイリストにもスキルアップは必要です。

また、自分がそうであったように先輩が時間を割いて無償で教えてくれたので、同じことを後輩にもしてあげるという連鎖が続いていくのです。

その結果、美容師はアシスタントだろうがスタイリストだろうが永遠に残業代がでないサービス残業をするという、負の連鎖に陥るのです。

③経営を圧迫させるため


(出典:https://keiei.freee.co.jp/2015/11/16/kigyou-shikinguri/

例えば、労働日数25日で毎日残業2時間おこなうと、月で50時間ほどの残業時間になります。
残業1時間1,500円だったとすると、月の残業代は75,000円となります。

スタッフが一人なら良いですが、スタッフが多くなればなるほど支払う残業代は多くなっていきます。
ただでさえ人件費がかかる美容業界ですから、そこに残業代をプラスされると資金繰りが大変でたちまち経営が悪化します。
実際に退職したスタッフから年単位の残業代を請求されるケースも多く、倒産の危機に陥るサロンもあるようです。

このように従業員に残業代を支払うことでサロンの経営を圧迫するので、正確に言うと残業代を“支払えない”サロンがほとんどのようです。

徐々に増えている高待遇のサロン

今回は美容師の残業代についてお送りしてきました。

理由はさまざまではありますが、残念ながら残業代を貰えていない美容師がほとんどです。
しかし、最近では公務員並みに待遇の良いサロンも増えています。

■週休2日制
■1日8時間勤務
■練習は営業中の空いた時間におこない残業させない

など、サロンの方も工夫しています。

しかし、まだまだ高待遇のサロンは少ないです。
技術職だから残業は仕方ないと言われても、人間ですので長時間働くと疲れも出ますし、ご褒美も欲しくなります。
次の日の仕事のパフォーマンスを考えるとなるべく残業時間は減らしたいところです。

自分の勤めているサロンの待遇が良くないのなら、今後の自己投資として割り切るか、一度サロンと話し合いをしてみても良いかもしれません。

また、経営者の方はもう一度残業の意味を考え、残業代を支払えないのであれば待遇面の工夫が必要になってくるのではないでしょうか。