カラー剤を使った時に肌にかゆみやかぶれ、赤みや腫れなどの症状が出ることがあります。カラー剤による皮膚炎がアレルギー性の場合、重篤な症状が出ることもあるので正しい対処が必要です。
今回は、カラー剤によるアレルギーの症状と原因、対処法を紹介します。また、アレルギーの有無を事前に調べるパッチテストや、アレルギーが起きにくいカラー剤についても説明します。
カラー剤によるアレルギーとは?症状や原因となる成分を紹介
カラー剤を使用した時に、頭皮、髪の生え際、まぶた、額、耳の後ろ、首すじなどにかぶれ、かゆみなどの皮膚炎症状が出ることがあります。
ひどい場合は顔全体の腫れやむくみ、頭皮から滲出液(しんしゅつえき)が出る、頭部以外に炎症が広がるなどの重い症状につながることもあり、初期症状が軽くても侮れません。
本項ではカラー剤による皮膚炎症状にはどんな種類があるのか、原因にはどんなものがあるのか紹介します。
アレルギー性と刺激性
カラー剤による皮膚炎は「アレルギー性接触皮膚炎」と「刺激性接触皮膚炎」に大別され、医師でなければ正確な判断は難しいです。
また、アレルギー性皮膚炎は重篤な症状につながる危険性があります。まずは各タイプの特徴と注意点を見てみましょう。
アレルギー性接触皮膚炎の特徴
- アレルゲン(原因物質)が体に触れると免疫が過剰に反応し症状が出る
- アレルゲンに反応する人にしか起こらない
- 一度アレルギーになると、アレルゲンに再度触れるたび症状が現れる
- アナフィラキシーという重篤なショック症状につながる恐れがある(蕁麻疹、息切れ、動悸、嘔吐など)
- アレルギーの原因は人によって違い、特定が難しい
刺激性接触皮膚炎の特徴
- 原因物質(刺激物質)の刺激の強さや、皮膚の状態や体調によって誰にでも起こりうる
- 刺激の少ない薬剤を使うことで回避できる場合がある
- アレルギー性皮膚炎と症状が似ていて判断が難しい
- 皮膚科医から使用可能と判断されれば、ヘアカラーが使える場合もある
自己判断は危険、必ず医師の診察を
アレルギー性・刺激性どちらも症状が似ており、自分で判断するのは難しいです。また、アレルギー性皮膚炎でも初期症状が軽い場合があり、その後アレルゲンに触れるたびだんだん悪化することもあります。
カラー剤を使用した時にかゆみやかぶれが出た時は、軽度でも自分で判断せず必ず皮膚科医に相談しましょう。
カラー剤に含まれる原因成分
染髪による皮膚炎は、カラー剤に含まれている成分が原因であることが多いです。アレルギーを引き起こす原因成分について紹介します。
可能性が高いのはジアミン(酸化染毛剤)
カラー剤に含まれる成分で、アレルギー性接触皮膚炎の原因として最も可能性が高いのは「ジアミン(酸化染毛剤)」です。
ジアミンはヘアカラー、白髪染め、アルカリカラーなど、「永久染毛剤」という染める力が強い薬剤に使われており、美容室のヘアカラーや市販のカラー剤の多くに含まれています。
必ずジアミンアレルギーだとは限らない
カラー剤によるアレルギーの多くはジアミンが原因ですが、アレルギーの原因は人によって様々で特定が難しいです。
カラー剤で症状が出たから必ずジアミンアレルギーだとは言い切れず、永久染毛剤に分類されないヘアマニュキアやカラートリートメントなど、刺激が弱い薬剤でアレルギー症状が出ることもあります。
疑わしい症状が出たら必ず医師に診てもらい、使える製品があるのか判断してもらうのが重要です。
体調によって症状が出る場合がある
体調が悪い時や頭部の皮膚に傷や腫れものがある時は、カラー剤の刺激を受けやすく皮膚炎症状が出ることがあります。
また、病中、病後、生理中、妊娠中などは皮膚のバリア機能が弱まり、カラー剤の刺激を受けやすいです。腎臓病、血液疾患等の既往症がある方も使用には注意が必要です。
さらに子供の肌は大人と比べて刺激を受けやすく、カラー剤を使用する際は大人以上に注意が必要です。
薬でカラー剤によるアレルギーの発症を抑えられるのか?
アレルギーは原因物質に対する体の免疫反応で起きるため、事前に原因を特定して薬で予防したり完全に抑えることはできません。また症状が軽いからといって市販薬で対応するのも危険です。
アレルギーリスクを完全に無くすことはできませんが、カラー剤が頭皮に付着する量を減らして薬剤の刺激を抑える施術は行われています。
頭皮保護剤の使用
肌にクリームやオイルなどの保護剤を塗っておくとで、カラー剤が直に触れるのを避けるという方法です。肌への負担を減らすことはできますが、薬剤が完全に触れないという保証はなく、アレルギーの発症リスクをゼロにはできません。
ゼロテクやゼロタッチ
髪の毛の生え際ぎりぎりにコームで薬剤を塗布する施術方法で、薬剤が頭皮に直接触れないことでリスクを減らします。
ただしシャンプー時には薬剤が流れて頭皮に触れますので、アレルギーの発症を完全に抑えることはできません。
薬は医師が処方した物を使う
カラー剤使用後に皮膚炎症状が発生した場合は市販薬で治そうとせず、医師の診断の上処方された薬を使いましょう。
市販薬で症状が収まって安心して再度カラー剤を使った結果、重篤なアレルギー症状が出てしまうケースもあるので注意が必要です。
カラー剤のパッチテストを美容室でも行う理由
「パッチテスト」とは、使用するカラー剤を腕の内側などに薄く塗って反応を見ることで、アレルギーの有無を調べる方法です。
市販のカラー剤を使用する時はもちろん、美容室でも施術前にテストを行うことでアレルギーによるトラブルを予防することができます。
本項では、カラー剤のパッチテストについて重要なポイントを紹介します。
「毎回」パッチテストを行う
パッチテストはカラー剤を使用する前に「毎回」行う必要があります。なぜならアレルギー症状が起きるタイミングは予測できないからです。
今まで症状が出なかった人に急にひどい症状が起こる可能性もあります。カラー剤使用前は必ずパッチテストを行いましょう。
カラーをする48時間前にテストを行う
パッチテストはカラー剤を使用する48時間前(2日前)に行う必要があります。なぜならアレルギーには、すぐ症状が出る「即時型反応」と、出るまでに時間がかかる「遅延型反応」があるからです。
薬剤を肌に塗布してから30分後と48時間後の2回確認することで、即時型・遅延型両方のアレルギー反応が確かめられるのです。
1度でも反応が出たらカラー剤は使わない
パッチテストで1度でも反応が出たら、テストに使ったカラー剤はもちろん、それ以外の全てのカラー剤も使用してはいけません。
なぜならどの成分が原因物質なのか自分では特定できず、他のカラー剤に同じ物質が含まれていることがあるからです。
また、別の日にパッチテストをして反応が出なかった場合でも使用してはいけません。1度でも反応が出ているならアレルギーになっている可能性があるからです。
美容室でもパッチテストを行うのが理想的
パッチテストには48時間以上時間がかかり、実際にカラーで問題が起きないお客様も多いことから、毎回パッチテストを行わない美容室もあるのが実情です。
アレルギーを起こす可能性のあるカラー剤は行政がパッチテストを義務付けており、リスクを減らすため美容室でも毎回行うのが理想ではあります。
美容室側としては、カラー希望のお客様にしっかりカウンセリングを行い、リスクを説明した上でパッチテストの実施を勧める努力が必要です。
お客様としては、美容室でパッチテストをリクエストすることでアレルギーのリスクを減らすことができます。
お客様はカラー剤のアレルギーがあるけど染めたい…そんなときは
「過去にカラー剤でかゆみが出たことがあるけど、どうにかして染めたい」、「敏感肌で肌が荒れやすいけどカラー剤を使いたい」、そんなお客様のリクエストになんとか応えたいものです。
本項では、アレルギーのリスクを抑えながらカラー剤を使用する方法を紹介します。
アレルゲンが特定できると理想的
過去にカラー剤で皮膚炎症状が出たことがある方や、アレルギーがあることが分かっている方の場合、原因物質(アレルゲン)が特定できていると理想的です。
アレルゲンが含まれていないカラー剤があれば、リスクを最小限に抑えながら施術が可能になります。
ジアミンが含まれるカラー剤を避ける
カラー剤のアレルギーの原因で最も多いのはジアミン(酸化染毛剤)なので、ノンジアミンの染毛剤を使うことでアレルギーのリスクを抑えることができます。
半永久染毛料を使用する
ヘアマニキュアやカラーリンス・トリートメントなど、化粧品に分類されるノンジアミンのカラー剤を使用することでジアミンアレルギーを避ける方法です。
脱色作用が無いため明るい色を出しにくく、永久染毛剤と比べて色落ちしやすいですが、その分頭皮や髪へのダメージが少ないのがメリットです。
脱色剤・脱染剤を使用する
ヘアブリーチやヘアライトナーなど髪の色素を脱色する薬剤で、ジアミンが含まれていないのでアレルギーリスクを減らすことができます。
脱色して明るい髪色にするだけでなく、ブリーチで脱色+半永久染毛料で染色することで、ノンジアミンで鮮やかなファッションカラーも可能です。
ヘナやハーブカラーを使用する
ヘナはインドを中心に中東や西アフリカなどの熱帯地域で栽培されている植物のことです。ヘナやハーブなど植物由来の天然染料を使うことでジアミンアレルギーを避ける方法です。
トリートメント効果が期待でき、白髪染めに向いているのが強みです。ただし植物性アレルギーの可能性があり、パッチテストは必要になります。
また、製品によってはジアミンが含まれているヘナ系染料もあるため注意が必要です。