美容師を続けていると誰もが一度は考える「独立」の2文字。
独立して地元に帰りのんびり仕事したい人、都内で流行の最先端で働き続けたい人など考えれば考えるほど夢は膨らみます。
しかし、「年収はいくらなのか」や「失敗したら」と思うと、中々決断に踏み切れないものです。
そこで今回は、美容師が開業した場合の年収や年齢の他に失敗例なども紹介していきます。
美容師が独立することについて
独立を希望している人の中には、ぼんやりと「いつまでに開業する」とか「資金はこのくらい貯めておこう」と準備をしている人がいるかもしれません。
実際の資金や開業に適した年齢はどのくらいなのか?
美容師が独立するための資金はどうするの?
まずは開業にかかる資金はどうするのかです。
それは開業の方法によって異なります。
オリジナルサロン
1から10まで自分で開業をおこなう方法です。
そのため、物件取得費用や店舗内外装工事、器具や材料費、広告宣伝費などすべてが自己負担となります。
初期投資が多くリスクも大きいですが、利益を出せばその分自分に返ってくるのでやりがいがあります。
資金は貯蓄分を頭金に金融機関からの借り入れ、制度融資と言われる地方自治体がおこなっている融資のあっせん制度などがあります。
また、器具などはリース・割賦・レンタルなどもあるので、上手く利用するケースが多い様です。
社内のれん分け
これまで勤めてきたサロンと契約を結び、ブランド名やノウハウなどを使用して開業する方法です。
しかし、ブランド名やノウハウは無料で使用はできませんので、ロイヤリティを払い使用させて貰います。
その他の開業にかかる費用はオリジナルサロンと同様自己負担となります。
ブランド名やノウハウのおかげで開業直後でも安定した経営が期待できる反面、初期費用はオリジナルサロンと同じくらいかかるのとロイヤリティを払うので毎月の固定費は多くかかります。
フランチャイズ
基本的な仕組みは社内のれん分けと同じですが、フランチャイズはこれまで働いたことがないサロンと契約を交わす点が大きく違います。
そのため、ロイヤリティを払うことや初期費用に関しても自己負担となります。
フランチャイズの場合は知らない者同士の契約のため、契約後に食い違いが発生することが多い様ですので、契約内容をよく確認しながらおこなうと良いようです。
業務委託型サロン
業務委託型サロンというのは、開業者とパートナーが役割を分担する開業方法です。
これは開業者がサロン運営や管理をおこない、パートナーが資金の準備の他にサロン運営・管理のサポートをおこないます。
そのため、開業者は初期費用を抑えて開業することができます。
しかし、開業者はサロン運営の責任はありますので売り上げが少ないとその分利益も減ります。
サロン運営に自信はあるが、資金力がないのでサポートを受けて開業したい人には有効的です。
美容師が独立する年齢・タイミング
美容師が独立する年齢はいくつが良いのか?
大体30歳前後が平均と言われています。
30歳と言うのは、美容学校を卒業しサロンで勤め始めて約10年経過した状態です。
10年程経験を積むと一通りの技術と接客術が身についており、指名のお客様もたくさんいるはずです。
また、比較的若いうちに開業することで、サロンをオープンした後にもお客様がつきやすいのです。
一昔前は25歳くらいでかなり若いうちに開業するパターンが多かったようですが、今と違うのは中卒(15、6歳)で働きだすことが多く、25歳と言うとやはり10年の経験を積んでいる場合が多かったようです。
この10年と言うのは美容師にとって大きな節目となるようですので、一つのタイミングと考えても良さそうです。
独立までの準備期間
スタイリストが独立する場合、計画し始めてオープンまでにはどのくらいかかるのでしょうか。
期間は早くて半年、じっくり時間をかけるなら1年ほどかかります。
①事業計画書作成・内外装業者、金融機関選び
②物件選び、申し込み・融資の申し込み
③融資、物件、内外装業者などと契約
④工事施工~完了・人材採用
⑤保健所、消防検査・各種届出
開業するまでにはたくさんの工程があります。
更に美容師として働きながらだと半年では大変かもしれません。
開業までの間には計画通りに行かずにトラブルが発生することも考えられるので、じっくり1年余裕を見て計画した方が不測の事態に備えられるでしょう。
独立する場合に必要なもの
開業する際に必要なものと聞かれ、真っ先に思い浮かぶのは資金だと思います。
しかし、開業する際には資金以外にも必要なものがあります。
資金
独立するには、まずは先立つものがないと始まりません。
具体的にいくらかかるのか?
店舗の立地条件などで家賃が変動したり、内外装費にどのくらいかかったりするのかで大きく変動しますが、大体1,000万円~2,000万円くらいかかると言われています。
お金持ちの家に生まれたり頑張って貯金したりした人は例外ですが、多くの場合金融機関などから借り入れが必要になる金額です。
そのため、物件選びや内外装業者との打ち合わせの際には、どのくらいお金がかかるか念入りに打合せしなければせっかく借りても足りなくなって開業ができないという事態が起こり得ます。
また、開業後の運転資金も必要になるので事業計画書や収支シミュレーションも念入りにおこなう必要があります。
物件
次に必要なものは物件です。
立地やターゲット顧客によって物件選びも慎重におこなう必要があります。
物件選びのポイントは以下になります。
①住んでいる年代・働いている年代を調べる(ターゲット客に当てはまるのか)
②競合店の有無
③店舗予定地前をターゲット客が通るか
④店舗予定地の交通量や交通機関でアクセスしやすいか
⑤路面・地下階・空中階の確認
⑥同じ建物内にターゲット客が好まない施設の確認
以上が物件選びのポイントとなります。
独立するにあたり立地条件が全てではありませんが、経営していく上では売り上げに大きく影響することがあります。
事前にしっかりと調べておきましょう。
経営力
ほとんどの美容師は開業するまでの間に技術力や接客力を自然と磨いています。
しかし、肝心の経営力はほとんどの美容師は勉強してないことが多いです。
夢にまで見た開業ですが、ただオープンさせるだけでは数か月後には潰れてしまいます。
売り上げ管理はもちろん、スタッフ教育や店舗運営能力も必要になります。
経営力は開業後の方が課題も見つけやすく自然と身につきやすいですが、開業するまでの間に少しは勉強する必要があるでしょう。
人材・人脈
一人営業の美容室なら人材は必要ありませんが、アシスタントやスタイリストが必要であれば人を雇う必要があります。
スタッフが多くいればそれだけ多くの予約が入れられますが、人件費も多くかかります。
このあたりも収支シミュレーションで事前におこない、何人くらいであれば雇えるのかを想定しておきましょう。
また、開業するにあたり人脈も大切になります。
人脈があれば求人広告費をかけずに知り合いや知り合いの紹介で人材を探せます。
そして、内外装業者や販促物の作成も知り合いがいれば頼みやすくもなります。
美容業界とは関係ないだろうと思っていても思わぬところで助けになってくれるので、日頃から人脈を広げ周囲の人は大切にしましょう。
補助金
補助金は国から支給されるお金で返済の必要がありません。
同じような言葉で「助成金」というものもあります。
助成金も国から支給されると言う事は同じですが、管轄する機関などが違います。
■管轄について■
補助金・・・経済産業省
助成金・・・厚生労働省
■目的■
補助金・・・新規事業・販路拡大時
助成金・・・従業員雇用や労働環境改善
■審査について■
補助金・・・あり(評価の高い事業計画書の中から選ばれる)
助成金・・・なし(要件さえ満たせば支給)
補助金も助成金もある一定の条件を満たすと貰えるもので、活用している美容室は多いです。
開業に関しては新規事業を目的とする補助金で、開業後は従業員雇用を目的とする助成金など賢く使い分けて助けを借りましょう。
独立した場合の成功率
独立するからには誰もが成功を望みます。
しかし、残念ながら全ての人が成功するとは限りません。
成功率を具体的に数字にするとオープンから1年以内に60%の美容室が廃業します。
10軒あったらそのうち半分以上の6軒が廃業します。
そして、3年以内に廃業する美容室が90%、20年以上続く美容室はたったの0.3%しかありません。
ちなみに一般企業と比較すると、5年で倒産する企業は85%もあるそうです。
そう考えると美容室経営は他業界より難しいのではないかとも考えられます。
独立した美容師と結婚するのは大変
日本の結婚事情は晩婚化で結婚適齢期も昔よりは高くなり、未婚率も年々上がってきています。
ある程度収入が安定してから結婚する場合が多い様ですが、それは美容師も同じです。
やはり、美容師と結婚しようと考えている人にとって心配なのが収入面です。
一般的に美容師の平均年収は約280万円とされていますが、開業すると年収が上がる場合があります。
しかし、先程の成功率を見ても全ての美容室が成功するわけではないので不安要素は消えませんが、成功すれば収入面の不安はなくなります。
ただし、美容師の仕事は朝から晩まで働きっぱなしですので、家事や育児に積極的に参加するのは難しいです。
ましてや経営者だとスタッフの生活もかかっているので忙しいです。
きちんと成功している美容師と結婚すると収入面の不安は減りますが、家事や育児の負担が大きいので決して楽とは言えないでしょう。
一人で美容師独立する場合
独立する場合、人を雇わず一人で開業する美容師もいます。
他のスタッフに気を遣わずにお客様に集中できるメリットはありますが、全ての仕事を自分一人でやらなければいけません。
片づけや掃除、電話対応に材料発注と仕事は多岐にわたります。
また、自分の売り上げから毎月の家賃や固定費、借り入れの返済もしなければならないので、売り上げが少ないと払うものが払えずに廃業する可能性もあります。
そのため、一人で開業する際には低料金でたくさんお客様をこなす経営方針だといつか限界がきます。
長い目で見ても高料金で一人のお客様にじっくり向き合えるスタイルの方が一人で独立するには有利となることが多いでしょう。
美容師独立する場合の顧客引き抜きのトラブル
独立をする際にお世話になったお客様に来て欲しいと思う人がほとんどでしょう。
しかし、会社の方針によってはトラブルが起こる可能性があります。
なぜかというと、顧客がいなくなると言う事は単純に売り上げが落ちます。
他のスタイリストに引き継ぎをしてもらえれば会社としては売り上げが確保できるので、顧客の引き抜きを良く思わない美容室が多い様です。
また、会社の方針事態に「顧客情報を持ち出すのは違法」と言う考えで誓約書を書かされているのであれば、後々訴えられる事もあるそうです。
ここまでは経営者と美容師の問題のように感じますが、引き抜きは美容師と顧客の問題でもあります。
開業のため退職の挨拶の際に、顧客によっては出店場所など色々聞いてくることがあります。
いくら会社側が違法と考えていても、最終的に決めるのは顧客の判断です。
「あなたにどうしてもやってもらいたい」といっているのに「それは困ります」というのもおかしなことです。
顧客の引き抜きについては会社によって判断が違うので、入社の際に確認して退職の際にはしっかりと話し合いをしておきましょう。
美容師が独立した場合の年収・儲かるの?
独立したら雇われていた頃より年収が上がるとも言われていますが、全ての方がそうなるとは限りません。
要は開業した際の売り上げ次第になりますので、年収が上がるも下がるも自分次第です。
独立美容師の年収400万円以上は1割、400万円未満は8割ともいわれているので本当に自分次第となります。
中には800万円~1,000万円稼ぐ美容師もいます。
儲かるかは別として、ひとまず年収400万円以上であれば雇われていた頃より上がる人もいるのではないでしょうか。
美容師が独立して失敗した場合
開業前は絶対の自信があったけど、いざ開業してみると思いのほか売り上げが上がらずに失敗してしまうこともあるようです。
立地や料金設定、スタッフ教育など原因は様々あるようです。
失敗例
ケース1 料金設定・営業時間
料金や営業時間の設定ミスで失敗する例があります。
料金設定は美容室によって様々で、もちろん低価格を売りにしたサロンもあります。
今回のケースは低価格にしたから失敗と言うわけではなく、低価格にも関わらず材料費がかなりかかっていたことが失敗の大きな要因です。
一般的に売り上げの10%以下に収めると良いと言われており、15%を超えるとかなり経営を圧迫させます。
また、「大学が近くにある」「オフィス街」など立地に応じた営業時間ではなく、お客様が利用しにくい時間に営業していることも失敗に繋がります。
ただし、それなりに集客できてリピート率も高ければ何とか持ちこたえる可能性があるので、一概にダメと言うわけではない様です。
ケース2 開業資金のショート
独立する際に貯めた貯金や借入金などの開業資金がショートしてしまうケースもあります。
これは開業資金の見積もりが正確ではなく、特に内外装工事が予想よりもかかってしまったとことで起こります。
この場合なんとか開業できたとしても、開業後運転資金が足りなくなり廃業するケースがあります。
また、工事中に災害が起こり開店前でまだ保険加入していなかったために、損害を受けることもあります。
こちらの非はなくてもお金が必要になりますので、開業に当たってはリスク回避ができるように対策も考える必要がります。
ケース3 開業前の段取り不足
これは物件トラブルの一つで、希望する物件の契約タイミングが合わずに断念するケースです。
銀行などからの融資の申し込みは、物件の申し込みをしてからおこなうのですぐに契約とはいきません。
そのため、もし融資の審査が通らないとなると、物件申し込みしているのにも関わらず物件契約ができなくなってしまいます。
物件のオーナーとしては契約者の融資が通らないことは正直何の関係もありません。
とにかく空き物件を埋めたいので契約までに時間がかかると、他の物件希望者と契約を結ぶことがあります。
最終的には白紙の状態になるので、時間と労力が無駄になり結局1から物件探しが始まります。
こうならないためにも開業は計画立てて、段取りは確認しておきましょう。
あえて独立しないという選択
独立についての話をしてきましたが、美容師になったからといって全ての人が独立しなければダメなわけではありません。
あえて開業しないという選択も十分にあります。
一昔前の美容業界は社会保険に加入しているところが少なく、組織と言うよりも個人商店というイメージでした。
そのため、保険は国民保険で年金などは国民年金になり老後の心配もつきものでした。
今ではきちんと組織として経営している美容室も増えてきて、社会保険に加入する美容室も増えています。
また、年齢が上がったからお役御免ではなく、年齢なりの経験があるので現場に立たなくても店舗管理や技術トレーナーに専念して働ける美容室もあります。
これは独立しなくても今後のキャリアや役職などのポジションが与えられということです。
つまり、現場の美容師としてのキャリアだけではなく、これまでの経験生かして働き続けられるので、あえて独立しないというのも美容師を長く続けるための選択肢の一つとなります。
まとめ
今回は美容師が独立した場合の気になる年収や資金、年齢など開業にまつわること紹介してきました。
独立は美容師を志した時から考えている人もいれば、仕事をしていく内に自然と芽生えたりする人もいます。
いずれの場合も独立と言う事は人生において大きな決断となります。
「絶対成功してやる!」と思う反面「もし失敗したらどうしよう」と不安もあるものです。
独立前に失敗しないためには、まずは計画立てて動くことです。
そして、現在の仕事の積み重ねが開業した後の成功に繋がるので、夢だけではなく目の前の仕事も大切にしたいものです。