“労働基準法”と言う言葉を聞いたことがありますか?
労働者が労働をする上で最低の基準を示したものです。
「今日も営業後にカット練習だ!」と意気込むアシスタントもいれば、「後輩の練習を見ないといけない!」と意気込むスタイリストもいるでしょう。
はたして、これらは労働基準法の範囲なのか?
今回は労働基準法と美容師の仕事について見ていきましょう。
労働基準法とは?
まず初めに労働基準法とは何か?
労働基準法とは働く上での最低条件を示した法律です。
賃金、労働時間、残業時間、休憩時間、休日数など労働をおこなう上での最低条件が示されています。
これは本来弱者になりがちな労働者と、優位な立場になりやすい使用者(雇用主)間を対等な立場にする法律です。
特に最近は労働時間と残業時間が問題となっており、大手の企業が違反していると度々世間の話題となっています。
美容師の労働時間の現状
(出典:Abema TIMES)
では、世間的に美容師は労働時間が長いというイメージがありますが、本当なのでしょうか?
営業時間
地域によって開店時間は違いますが、大体の場合9時~10時に開店する美容室がほとんどだと思います。
そうすると閉店時間は18時から19時になり、実質労働8~9時間で世間一般的な労働時間と変わりありません。
技術練習時間
美容業は技術職のため、練習をする必要があり、開店前か営業後の時間を使っておこないます。
つまり、営業時間外に練習をおこないますので、通常の労働時間よりも長くなってしまっています。
講習・ミーティング
さらなるスキルアップや新しい薬剤を導入する際に講習会をおこないます。
また、ほとんどの美容室で月に1回以上ミーティング開き、売り上げアップのための話し合いをおこないます。
いずれも営業時間外の開店前か閉店後におこないますので、通常の労働時間よりも長くなってしまっています。
やはり長い美容師の労働時間
(出典:株式会社アクセスBlog)
美容師の労働時間の現状を把握いただけましたか?
実際の営業時間はその他の業種と変わりありませんが、美容師の業務は通常の接客業務以外にも練習やミーティングなどといった、営業時間外の業務もあります。
それを含めるとかなり長い労働時間となり、ハードワークと言われているのも納得です。
次は美容師の休日についてお伝えしていきます。
美容師の休日について
(出典:へんてこ社労士のときどきブログ)
さて、美容師の休日はどういう現状なのでしょうか?
結構多いのが週1日休みにプラス月2日で月に6~7日休むケースです。
最近は週休二日制の美容室も増えてきましたが、現状はまだまだ休みが少ない状態です。
長期休暇、祝日、有休の現状
夏季や年末年始などの長期休暇も4~5日休める美容室とそうではない美容室に分かれます。
また、祝日は定休日と重なっていれば休めますが稼ぎ時とあって、基本的に営業している美容室がほとんどです。
では、有給はどうかというと、これに関しても人材不足の美容業界において休みを取ることは周りの目が気になって取りづらいという現状あります。
美容師の休日については過去の記事も参考にしてください。
美容師って休みが少ない!?気になる美容師の休日
労働基準法から考える美容師の仕事
労働時間や休みが少ないように感じる美容師の仕事ですが、労働基準法から考えるとどうなのでしょうか?
■労働時間
1.使用者は、労働者に休憩時間を除き1週間について40時間を超えて労働させてはならない。(労働基準法第32条より)
2.使用者は、1週間の各日については、労働者に休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない。(労働基準法第32条より)
労働基準法第32条ではこのように示されており、「法定労働時間」とも言います。
どの企業も必ず8時間労働がおこなわれているわけではなく、企業独自で法定労働時間内で労働時間を設定していることがあります(7時間や7.5時間など)。
これを「所定労働時間」と言います。
「法定労働時間」または「所定労働時間」を超える場合は残業代が発生しますが実際はどうなのでしょうか?
残業代が出ない!?
最初に解説したように美容師の場合、営業後の練習やミーティングなどを合わせると労働時間は10時間を軽く超えます。
古くから美容業界では営業後の練習やミーティングなどは労働時間に含まれず、個人の意思でおこなう“サービス残業”とみなされることが多いのです。
本来であれば超えた分は残業代とされますが、美容業界独特な考えで残業代が出ないことが多いのです。
残業時間ついては過去の記事も参考にしてください。
【調査】美容師に残業代はあるのか
■休憩時間
労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は1時間の休憩を労働時間の途中に与えなければならない。(労働基準法第34条1項)
労働基準法第34条1項ではこのように示されていますが、実際はどうなのでしょうか?
一日立ちっぱなしの現実
美容師の仕事は予約で管理されていたり、急な飛び込み客の対応が必要になったりします。
そのため、休憩する暇もないくらい忙しい時は気づけば朝から夕方まで立ちっぱなしだったということも多々あります。
お客様をお待たせする訳にはいかず、現実的に休憩を30分取るのすら難しい美容室が多いです。
■休日数
1. 使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも一回の休日を与えなければならない。(労働基準法第35条 1項)
2. 前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。(労働基準法第35条2項)
労基法第第35条ではこのように示されていますが、実際はどうでしょうか?
改善の余地がある休日
最初に述べましたが、美容師の休日は月6~7日程度の場合が多いです。
つまり最低でも1週間に1日は休みを確実に取れていますので、休日については労働基準法が守られていること多いです。
しかし、他業種に比べて休日数が少ない美容室がほとんどですので、休日に関してもまだまだ改善の余地があります。
美容業界は変革の時
(出典:名言Tシャツ.jp)
今回は労働基準法と美容師についてお伝えしてきました。
普段あまり意識しない労働基準法ですが、美容業界は特に労働時間などが特殊と言われているため意識しない人が多いように思います。
昔からの習慣は守るべきものもありますが、労働時間などについては改善する必要があります。
労働条件の改善は現在美容師として働いている人にとって、今後の人生を左右すると言っても過言ではありません。
これから美容師を目指す人、美容師としてスタートを切った人のためにも美容業界は今まさに変革の時なのではないでしょうか。