この記事では「美容室の経費としてどのようなものが落とせるのかを知りたい方」や、「業務に関わる出費はすべて経費として計上できるの?という疑問を持っている方」に向け、美容室の経費について解説しています。
基本的には業務に関わる出費は経費として計上できますが、状況によっては一部しか認められないものもあるので注意が必要です。
そこで今回は「美容室の経費一覧」と、「経費として認められるもの、認められないもの」が分かるよう美容室の経費について徹底解説していきます。
経費を抑えておくことで利益をしっかり確保できるようになるだけでなく、お金の使い方も明確になるので、より効率的な経営につながるでしょう。
美容室での経費とはどのようなものか?割合含め内訳を一覧にしてまとめてみた
最初に経費を簡単におさらいしておくと、経費とは美容室の運営を続けていく上で必要となる出費のことです。
経費には毎月決まった額が支出される「固定費」と、月によって支出が異なる「変動費」とに分けられ、例えば店舗の家賃やスタッフに支払う給料(人件費)は固定費、ヘアメイクのためのシャンプーやトリートメントなどは変動費になります。
中でも美容室で大きな割合を占める支出は、固定費の「家賃」と「人件費」、変動費の「仕入れ代金」で、返済がある場合も大きな支出となることが多いでしょう。
大きな経費といわれる適正家賃は10%程度
一般的な美容室で、売上に占める家賃の割合は10%前後が適正と言われていますので、毎月のおおよその売上が80万なら、10%で8万円前後が適正家賃と言えるでしょう。
都心部や駅前など利便性の高い土地になればなるほど家賃が高額となり、売上に占める割合も大きくなる傾向にあります。
家賃は固定費として毎月必ず発生する支出なので、より利益を残したい場合は可能な限り抑えたほうが良いですが、目安としてだいたい売上の10%が家賃として支出をしても良い範囲です。
逆に家賃から売上目標を立てることもできますので、家賃が30万ならば300万が毎月の売上目標となるでしょう。
人件費はスタッフの人数で大きく異なるが50%程
人件費は美容室の経費で最も大きな割合を占める費用で、自分1人で経営しているか、スタッフを雇っているかによって割合も異なります。
美容室の人件費の適正割合は最高でも50%と言われていますので、月々の売上が150万なら75万が人件費として計上できる限界です。
スタッフを雇っているなら、1人当たり最低でも20万~25万程度が毎月スタッフの給料として必要となるでしょう。(社会保険料を含む)
仕入れ代金は売上に比例し10%程度
仕入れ代金はカラーリングやシャンプーなどを施す際に使う資材と、店内で販売するシャンプーやトリートメントなどの販売商品を仕入れる際の代金で、売上の10%程度が適正とされています。
来客数や商品の販売数が増えるほど仕入れ代金も増えるので、売上に応じて増加していきますが、比率はあまり変わりません。
美容室の中で特に大きな支出となる「家賃」「人件費」「仕入れ代金」をまとめると以下のようになります。
- 家賃(売上の10%程度)
- 人件費(最大で売上の50%)
- 仕入れ代金(売上の10%)
美容室経営の経費で落とせる項目を勘定科目とともに一覧で紹介!
美容室の経費として落とせる支出を固定費と変動費に分け、それぞれどのような勘定科目があるのかを具体的に見ていきましょう。
すでに美容室を経営されている方やこれから開店しようと思っている方は、経営の参考にしてみてください。
毎月ほぼ決まった額が支出される「固定費」の内訳一覧
固定費は毎月ほぼ決まった額の支出になる費用で、代表格として家賃や人件費、通信費などが挙げられ、毎月予測が立てやすいので経費計上しやすい反面、削るのが難しい面もあります。
美容室で固定費して計上される勘定科目は以下の通りです。
家賃
美容室を運営する上で必要となる「店舗を借りるために必要な費用」でテナント費用とも呼ばれ、毎月決まった額の支払いとなるので固定費です。
店舗が無いことには業務ができないので、美容室を運営していく上で必ず必要となる費用ですが、自宅兼店舗の場合は家賃が必要ないだけでなく、住宅ローンを支払っているならローンの一部を美容室の経費として計上できます。
人件費
人件費は経営者の報酬や、スタッフを雇っている場合はスタッフに支払う毎月の給料で、社会保険料も含まれます。
美容室の運営において最も大きな割合を占める費用で、スタッフ1名あたり20万~25万ほどが必要で、年々最低賃金も上がっていくので、微増ながら増えていく傾向にある費用です。
水道光熱費
水道光熱費は水道代や電気代、ガス代のことで、お客さんの髪を洗ったり、ドライヤーで乾かしたりする際に必要です。
費用は1人で経営している美容室なら一般家庭より少し高い程度で、電気代が月に2万5千円前後、水道料とガス代が8千円前後となっています。
通信費
通信費は店舗の固定電話代や携帯代、インターネットの費用のことです。
スマホやパソコンの普及によりネットを介して店舗に予約を入れるケースが増えており、ネット予約ができないと機会損失に繋がり、やや不利な面があります。
SNSを使って自分が施したヘアースタイルの画像をアップしたり、お客さんとやりとりをしたりする美容師も増えているので、ネットは必須と言えるでしょう。
通信費用の相場は、光回線で固定電話を置いている場合、一般家庭と変わらず月当たり6千~7千前後となります。
保険料
保険料は、火災保険のみならず誤ってお客さんに怪我を負わせてしまった場合やクレーム対応など、様々なトラブルの際に金銭保障される保険の費用です。
業務に関わる保険は経費として計上できますが、生命保険など個人に関わる保険は経費計上ができません。
技術研究費
技術を向上させるための研修やセミナーへの参加費用や、書籍の代金などスキルアップにつながる学びの費用も経費として計上ができます。
1日から3日程度の研修をはじめ、通信や通学で半年など長期間学ぶコースもあり、どちらも業務に関わることなら経費として認められますので、忘れずに計上しましょう。
研修やセミナーなどは毎月受講する場合は固定費、単発的な場合は変動費で、通信や通学では全体でかかる費用を期間で割って毎月計上します。
月によって支出額が異なる「変動費」の内訳一覧
続いては、その時々に応じて支出される変動費の勘定科目を紹介します。
変動費は毎月一定額が支出される固定費とは違い未確定な部分もありますが、ある程度の期間美容室の運営を続けている場合は、過去の支出を見返すことで予測が立つでしょう。
材料費
材料費はシャンプーやトリートメント、ヘアカラー剤などお客さんの髪を施す際や、店内で販売する備品の費用です。
美容室のコンセプト(高級路線、低価格路線など)や仕入先、毎月の売上によっても材料費は変動しますが、おおむね5万~7万円前後が相場となっています。
消耗品費
消耗品費は、ハサミや櫛、ドライヤーなど購入価格が10万円以下の備品のことです。
10万円を超えると資産扱いとなり、品目で決まるのではなく購入価格によって消耗品か資産かが決まります。
消耗品費は他にも印刷用の用紙やインク代、ボールペンなどの事務用品も含まれ、毎月決まった購入があるわけではないので変動費扱いです。
旅費交通費
旅費交通費は、スキルアップのためのセミナー参加や他店への視察など、業務に関わる行事に参加する際の移動にかかる交通費のことです。
宿泊を必要とする行事の場合は、交通費に加え宿泊費用も経費として計上できます。
雑費
雑費は、銀行振込の際の振り込み手数料やゴミの処分料、店舗内のクリーニングを業者に依頼する費用などが含まれます。
勘定科目には該当しないけれど、業務に関わる支出が行われた場合は雑費として計上するのが一般的です。
修繕費
修繕費は店舗内外の景観を維持するのに、内外装を一新する際の費用や、不具合の出た備品を修理するための原状復帰にかかる費用のことです。
費用で20万円未満であれば、修繕費として計上できますが、20万円を超える場合は「資本的支出」となることがあり、その場合は固定資産として毎年減価償却で計上しなければならなくなります。
経年劣化による修繕の他に、災害などで破損して原状復帰するための費用も修繕費です。
広告宣伝費
広告宣伝費は、美容室を多くの人に知ってもらうために近隣にまくチラシの費用や、ネット上に広告を載せる際にかかる費用などのことです。
無料配布されるクーポン付きの冊子に掲載してもらうための掲載費や、ホームページを作成し運営していくためのドメイン費やサーバーレンタル代も広告宣伝費に含まれます。
ドメイン費や年間契約が多く、サーバーレンタル費も毎月支払うのなら固定費ですが、年間払いなど一括して支払う場合は変動費です。
確定申告時に領収書は必須?美容室の経費の落とし穴
確定申告時に領収書は必須ではありませんが、計上した費用の領収書は所得税法により、最低でも7年間は保管しておくよう義務づけられています。
税務調査の際に領収書の提出を求められることがあり、その際に提示できるよう保管管理をしておく必要がありますので、確定申告の手続きが終わっても捨ててしまわないようにしましょう。
領収書をもらうのを忘れてしまった場合は?
経費の計上には領収書が必要ですが、万が一もらうのを忘れてしまった場合は、何をいつ、いくらで購入したのかを購入した店舗で伝え、支払証明書を発行してもらいましょう。
レシートでも購入した商品や購入日、購入代金など明細が記載してあれば領収書の代わりとして役立ちます。
購入した商品名と日付、金額が明示されていれば必ずしも領収書である必要がなく、レシートでも代用が可能です。
美容室の経費を管理する上で注意すべきポイント!
経費を管理する上で注意すべきポイントは、「経費の金額によって計上の仕方が変わる」「業務に関わる部分のみ経費として落とせる」点です。
また、業務と私用で共用している場合は、業務としての使用割合を算出し、業務利用分だけを経費計上する必要があります。
経費の金額によって計上の仕方が異なる
業務で使うハサミやドライヤー、テーブルなど備品の費用は金額によって落とし方が異なりますので、注意が必要です。
購入金額が税抜で10万円未満や、使用できる期間が1年未満のものは「消耗品」扱いとなり、一括で経費計上できますが、10万円を超える場合は資産とみなされ、減価償却(げんかしょうきゃく)が必要になります。
減価償却は法律で定められている耐用年数に応じ、毎年経費として落とせる金額が決まっており、例えば購入金額が12万円の備品で耐用年数が3年なら、12万÷3年=4万円が1年で落とせる金額です。
あくまでも業務に関わる費用のみ落とせる
美容室の業務に関わる支出は経費として計上して問題ありませんが、あくまでも美容室の運営に関わることのみが経費として認められます。
プライベートでも利用した場合は経費と分けて計上する必要があり、例えば技術向上のために他県に視察に行く際、視察ついでに観光を行えば観光の部分は経費として認められません。
業務と私用を兼用で使っている場合の経費計上
美容室の運営と私用とで共用している場合、経費は美容室の運営に関わる部分のみ認められます。
住宅費用や光熱費、通信費など、そのまま費用すべてを経費として計上することができず、美容室の運営として使用している割合を算出して、業務で使った部分のみを経費計上しなければなりません。
光熱費が毎月3万円かかったとして、美容室の業務として使った分が7割なら、2万1千円が経費計上できる分です。
このように、業務と私用で共用している場合は、業務で使った分の割合を算出し経費計上する「業務按分(ぎょうむあんぶん)」が必要になります。
まとめ
美容室の経費は業務に関わる支出なら、ほぼ経費として計上ができます。
主な勘定科目を固定費と変動費に分けて紹介するのに加え、経費で落とせるもの、落とせないものについても解説してきました。
美容室の店舗と自宅が同じ建屋となっている場合、業務で使う分と私用で使う分を分けて計上する必要があるなど、注意すべき点もあります。
経費として認められる勘定科目を把握しておくことで、後に落ちなくて困った!ということも避けられるでしょう。